「河口龍夫展ー見えないものと見えるものー」(兵庫県立美術館)

syn_chron2007-12-09

この展覧会も16日まで。


展覧会の最初の一室は、須磨の海岸の時間の経過を追ったモノクロ写真がぐるりと四方に並ぶ。(《陸と海》)
ほとんど無に近い空間でありながら、静かな波の揺れと時間の流れを感じとることができた。
そのあとにつづく展示も華やかな雰囲気とは遠く、でも私は作品たちの小さな息づかいとともに佇んでいる時間がよかったと思う。
途中、真っ暗な空間へマグライトひとつで作品を鑑賞する展示室《闇の中のドローイング》や、同じく闇の空間で数分間スケッチをする体験型インスタレーションがあって、自分の感覚の曖昧さを再認識…というよりも、こういった普段の感覚を削がれたときに、いつも私は自分の弱さを痛感させられている。直島の南寺での体験を思い出す。


あっと思わせられたのは、この美術館で「光の庭」と名付けられている中庭にも作品が展示されていたこと。
そして企画展示室を出たところのガラス張りの廻廊にも展示が続く。そこでもああという感嘆が漏れる。
これほどこの美術館の空間とコミットされている作品を観たことがなかった。
現在活動をされている作家の方だからこそできた展示構成だっただろう。


同時開催で名古屋市美術館でも河口龍夫展が行われていて、開催当初は興味がなかったのに、名古屋行きを考え始めてる。
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2007/kawaguchi/index.html



またムンク展が始まったら騒々しくなるのだろうけど、この日の兵庫県立美術館は人の出入りもまばら。
しんしんと空間の雰囲気が降りかかってくるような気がする。