瀧口範子「にほんの建築家 伊東豊雄・観察記」

にほんの建築家 伊東豊雄・観察記

にほんの建築家 伊東豊雄・観察記



本屋さんに行ったら買ってしまうだろうなあと思っていた本。
やっぱり購入していました。
まだ読み始めたところなのですが、
最初の章でなんともいえない気持ちでいっぱいになったので感想を書きます。


建築家の方の本にはコンペで理不尽な目に遭う事件がたびたび書かれているけれど、
伊東豊雄さんもその例にもれず。
特にゲント市文化フォーラムの指名コンペの経緯を読んでいるとたまらなくなった。
どんなコンペでも真剣勝負で取り組むのはもちろんだけれど、
この競技では奇跡のようなアイデアが生まれ、
それを建設可能にするために紆余曲折し、
その過程でコンペチームは異様な熱気で盛り上がっていたらしい。
「建築家のキャリアの中で、こんな機会に巡り会えるのはそうたくさんあるものではない。」
という記述が端的な表現だと思う。
それほど重要な位置になるはずだった設計案だった。
なのに最終的には地元の建築家のありきたりな案が通ってしまう。
「結局、僕たちはコケに使われたんです。」というのが伊東氏の漏らした言葉。


私はゲント市の地元の建築家の案を見ていないので、私自身の判断はできない。
でも国際的なコンペにはでてこなかったようなその建築家が
レム=コールハース伊東豊雄より優れていたというのはよっぽどのことだと思う。


「ゲント市文化フォーラム」のコンペ案のところで、
ふと先週に読んだ「みちの家」を思い返した。


みちの家 (くうねるところにすむところ―子どもたちに伝えたい家の本)

http://d.hatena.ne.jp/syn_chron/20060324


もう一度本を開く。
やっぱり「ゲント市」のコンペ案のプロジェクトもおはなしになっている。
「音の洞窟」という章。
いろんな思惑は全て取り払われていて、
伊東氏がこの設計で作り上げたイメージだけが純粋に描かれていた。
私はその空間に入ってみたかったと思った。