「カルティエ現代美術財団コレクション展」(東京都現代美術館:MOT)

http://www.mot-art-museum.jp/kikaku/74/


東京都現代美術館に訪れたのは初めてです。
思っていたよりもいい建物だと思いました。
健常者の視点に過ぎないかもしれないけど、
展覧会をまわる動線の取り方が面白い。
展示によって、その動線は変えてるのかな。


カルティエのコレクション展について。
これから観に行く人のために書こうと思います。
(全てを詳細に書かないようにしますね。)

  • 1階

会場に入ってすぐに置かれているのはカイザ・ルーの『裏庭』。
ピクニックの風景をビーズで作りあげたオブジェ。
最初にこんな華やかで驚きのある作品が現れると、
これから鑑賞しようという自分に、活力が与えられたような気持ちになる。
この階でもうひとつ驚かされたのが、ロン・ミュエクの『イン・ベッド』。
チラシの写真にも載っている、白いベットに横たわる女性のオブジェです。
この作品のすごさは、会場に行かないと分かりません。(写真じゃわからないよ!)
これが今回の展覧会の顔になっているのに納得してしまう。

  • 2階

この階はすごく小さなスペースに日本の若いアーティストの絵画が2点あるのみ。
松井えり菜さんの『宇宙☆ユニヴァース』『えびちり大好き!』
個性的な作風の自画像で面白い。
また他でも観る機会があるといいな。

  • 3階

衝撃を受けたのはデニス・オッペンハイムの『テーブル・ピース』。
そのオブジェが置かれている部屋に入ったとたんに「え〜!?」という驚き。
幅約60センチ、長さ18メートル!もあるテーブルの端と端に人形が座っていて、
互いに意味不明の会話を叫び続けている。
その不可解さが観ている側にがんがん迫ってきて、圧迫感を感じるけれど、
思わず微笑んでしまうようなユーモラスさも兼ね備えているのが
この作品の良く出来ているところだと思う。
多分この部屋の入り口からでは、テーブルの側面に対して立つことになると思うけれど,
ぜひ作品を一周して、自分の好きな眺めを探してみて下さい。
私はテーブルの端から(片方の人形の後ろに立ったところから)
もう一方の端を眺めるのが一番いいと思いました。

  • B2階

ここの階でまず良かったのは2人の写真家。
ナン・ゴールディンと森山大道
ナン・ゴールディンの『性的依存のバラード』は、
数百点の写真のスライドショーを、音楽を流しながらテンポ良くまわしている。
ここに辿るまで、2、3の暗室での映像を観たけれど、
こんなにひきつけられるインスタレーションはなかった。静止画の連続にも関わらず!
時間的に全部は観れなかったけれど、
ラブリーな曲調とともに、幼い子供たちが次々と入れ替わりに映るところから
一転してダークネスな曲になって筋肉質の男性の写真群へ移るあたりを観た。
森山大道の『ポラロイド、ポラロイド』は
3262枚の写真を並べて、ひとつの部屋の四方の壁がつくりだされている。
この撮影には3日費やしているとのこと。
ぱっと全体を観るのと、じっとひとつひとつのオブジェクトを追って行くのでは、
それぞれ認識の違いがあるのが面白い。


ウィリアム・ケントリッジ『ステレオスコープ』
8分22秒のアニメーション。
木炭のモノクロに青色をプラスした色彩で綴られている。
破滅へと向かっていく切迫感のあるストーリーと、物哀しいメロディー。
木炭の濃淡のあるタッチを重ねていく動きに、独特の感じを受ける。


マーク・ニューソンケルビン40』
ジェット機のオブジェ。
サイズは2m×8m×8m。
アルミでできたボディの曲線が美しい。
ここまで思想に溢れた作品を鑑賞してきて、
この『ケルビン40』を見せられると不思議な気持ちになる。
目の前のジェット機には政治や哲学なんていうのは飛び越えてしまっていて、
「カッコ良く出来たぜ、いいだろー」ってのだけのように思えるから。


ここまで、印象に残ったものを中心に書きました。
会期は7月2日まであります。
現代美術って面白くない、分かんない人もいると思うのですが、
それはまだまだ同時代の作品が淘汰されていなくて、
混沌としたものを全てみせられているせいもあるのではないかと考えています。
私も全然気持ちが乗らなくて、なにも感想が残らないまま帰ってくる展覧会もあります。
今回の「カルティエ現代美術財団コレクション展」は、
キュレーターの鋭いセンスが表れた、素晴らしい展覧会だと思います。
関東圏の方はもちろん、私みたいに東京から離れている人でも、
旅行や出張の際に、ぜひ訪れてほしいオススメの美術展でした。