吉田修一『女たちは二度遊ぶ』


女たちは二度遊ぶ

女たちは二度遊ぶ


文庫になってからでもいいかなあと思っていたんだけれど、
先々週ぐらいの新聞の書評を読んで無性に読みたくなってしまった。
月曜の会社帰りに購入して読み始める。
あっと言う間に読み終わってしまいそうな文章だったので、
通勤帰りの電車だけで読むことに決めておいた。
おかげで読後感をきちんと味わえたような気がする。


内容は文芸誌「野生時代」に掲載された11の短編集。
すべて「…の女」とタイトルが付けられ、
ある男性が、過去に出逢ったひとりの女性について思い出を綴っている。
(「十一人目の女」は語り手が違っているけど。)
単行本で並べられているのは掲載順ではなく、多少入れ替えがされている。
その中で最後の2編に重みを感じた。

  • 「十一人目の女」

この回だけ語り手が第三者
「裕美子」という看護師が中心になっているように思わせながら、
その裕美子を殺害(?)する加害者で、彼女の同棲相手である「彼」にひきこまれていく。
事件を起こしたのは肯定できるものではないけれど、
変わり者に思われていた「彼」の方が実はまともに感じられてしまう。

  • 「ゴシップ雑誌を読む女」

この連載の初回にあたる短編。でも単行本の最後に選ばれていた。
世間では変わった人と疎外される女性「泉ちゃん」が登場する。
初めはこの「泉ちゃん」にあまりいい印象は受けない。
でも読者は、語り手の男性とともに次第に彼女の精髄に触れていくことになるんだと思う。
そして他の短編が淡々としているのに比べると、ずっと感情を込めて話が締めくくられている。
最後を飾るのにふさわしい回だと私は思った。