「ニュージオメトリーの建築」展のトークイベント(中之島中央公会堂)

会場の向かって左から、五十嵐太郎氏、伊東豊雄氏、
スクリーンを挟んで遠藤秀平氏、藤本荘介氏が着席されて講演がスタート。
まず初めに遠藤・藤本両氏が今回の建築展と近作のプレゼンをされ、伊東氏の講評が続く。


本題は「ニュージオメトリー=新しい幾何学」の建築について。
これまでの近代建築はミースとコルビュジェ、2人の巨匠の幾何学が踏襲され、
(均質なもの、透明なものに向かっていくために)ひたすら人間の生命力は失われている。
ここから違う建築を目指すものとして「新しい幾何学」が捉えられる。


キーワードのひとつとして挙げられたのは「直角」。
五十嵐氏が直角はなぜ生まれたのかという問題提起を投げかけたときに、
明解な答えをされたのが伊東氏だった。
床が水平である必要性→必然的に柱が垂直になるということで、
「直角」は垂直から発生したんだろう、決してプランからではないと。


このミース・コルビュジェを象徴する「直角」の幾何学から離れるために、
KPOの建築展では遠藤氏が屋根、藤本氏が壁に曲面を使っているが、
伊東氏はナショナルギャラリーの「ベルリンー東京展」の会場構成で床を操作している。
(KPO展でも同じ意図はあったそうで、床を全面発砲スチロールで覆ったのも、
自らの重みで床にめり込む感覚を与えるためだったらしい。)


…とここまで昨日書いてみたのですが、今日(8/29)GA JAPANを手にとって読んでいると、
伊東さんが述べられたことがさらっとまとめられているのにがっかり。
やっぱりプロは違う。

GA Japan―Environmental design (81(2006/7-8))

GA Japan―Environmental design (81(2006/7-8))

伊東さんの《瞑想の森》とミースのナショナルギャラリーの会場構成のレビューがあって、
それぞれ屋根と床に曲面を使った意図やこれからの展開の可能性について述べられていた。
確か一度読んだはずだけど、今回はするすると内容が頭に入ってくる。
講演できいたことと、自分で文章にしようとしていたことだったからかな?


もうひとつ講演の前に読んでいたのは『私たちが住みたい都市』。

山本理顕さんが司会で行われたシンポジウムの記録。
第1回の伊東さんと阪大教授の鷲田清一さんが「身体」をテーマにして話されたことは、
今回の講演の内容ともリンクされていて面白い。
特になぜミースやコルブの幾何学から先に進まなければならないか、その必然性が分かる。


もう講演の内容は記さないので、私個人の感想を書き留めておく。
以前藤本氏の講演会を聴きに行ってから疑問に思っているのは、
その建築の「かたち」を決めるのに基準はあるのかということ。
http://d.hatena.ne.jp/syn_chron/20060721
正式名称が分からないけれど、来月の「新建築」に掲載される子供のための精神病棟があって、
そのいくつも小さく分かれている棟の配置や、それぞれの棟の壁の切り込みの意図することを考えてしまう。
きっちりした法則が出来上がってしまったら、新しい幾何学とはいえなくなるのは分かる。
でもそのもやもやとしたものがずっと気になっている。
そういう点からみると、遠藤さんの《Halftecture》のような「重力」が「かたち」を決定し、
人間の意図が入り込めないというものの方が納得がいくような気がする。
現時点の私にとっては。


講演が終わって公会堂の裏手の道を歩いていると、目の前を伊東さんと藤本さんが並んで歩かれていた。
世代は違うけれど、確実に今の新しい動きの中心を担っているお二人を眺めながら、
頼もしいような気持ちになって、次の角は別の道を選んだ。