堀江敏幸『郊外へ』

お盆の移動中に持ち歩いていたのはこの本。

郊外へ (白水Uブックス―エッセイの小径)

郊外へ (白水Uブックス―エッセイの小径)

散歩者の文学。ずっとこの本の存在に気付かなかったことが情けなく、
それでも今こうやって手にしていることが有り難く。
勝手に私の頭の中はとんでしまって、
十代の終わりに荷風に出会ったときの感触を思い出す。
『?(ボク)東綺譚』は路面電車を乗り継いで隅田川の東、
東京のはずれの場末に通う小説だった。
同様にパリのへりへと移動してく視点がいい。
『おぱらばん』も同じような感じになっていたかな。
今度はパリの地図を参照しながら再読したいと思う。


堀江さんが気になって、著作を調べていた頃から頭に重なっていたのが、
去年11月に観た東京国立近代美術館の写真展、「写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論」。
『郊外へ』を読了したら、図録を調べてみようと思ってた。

ぼんやりと記憶にのこっていたのはその展覧会の中の、パリ郊外の写真の連作。
作家名さえ忘れていたのだけど、
小野規さんの「周縁からのフィールドワーク」という作品だったことを確認する。
パリとは思えない風景が並んでいたのが印象的だった。
高層アパート、殺伐とした車道、スプレーの落書き…。
きっとどこかで堀江さんとつながるんだと考えていたのに、
小野さんのインタビューを読むと微妙に立ち位置が違っていることを知らされる。
(↓図録のテキストでは省略されていた箇所も載っているインタビュー記事)
http://onotad.free.fr/page-fieldwork/interview-ffp(japanese).html

堀江さんと小野さんは、視線の始点や方向が異なっているし、
そもそも小説と写真という違いがあるのだけど、
同じパリ郊外を扱われていることに魅了されてしまいそう。