『家の?』青木淳 ・2

家の? (くうねるところにすむところ 子どもたちに伝えたい家の本)

http://d.hatena.ne.jp/syn_chron/20060627の続き)

上記のURL、6/27にはアルマジロ人間”論争”なんて書いてしまったけれど、
現時点では”騒動”の方が適しているようなので、訂正しておく。


この絵本は、青木淳建築計画事務所設計の《U》邸を舞台にして、
そこに住む2匹のアルマジロ人間の一日の物語が描かれている。
読む前には先入観があっていやだなあと思っていたけれど、
次第にU邸の魅力が伝わってきて、
読み終わったあとには、この家をすっかり気に入ってしまった。
以前に図面をみたり、青木氏の講演でスライド付きで説明されたりしていたのに、
この絵本でやっと本当の良さが分かったような気がする。
裏と表、ニ面性の仕掛けがこんなに豊富にあるとは気付けなかった。


良い本だというのが分かると、
今回の騒動に発展してしまったのがますます残念に思う。
小野氏は6月7日付の陳述書で、
”なぜ事前に私に1本の連絡ができなかったのでしょうか”と述べられているけれど、
その手続きがあればキャラクターの無断使用、無断改変にはつながらなかったわけで、
青木氏側は内心、その一点をおおいに悔やまれているんじゃないかと想像する。
著作権の認識や、アルマジロ人間に対する思い入れの相違が
こんな展開を生んでしまったのかなあ。
でもあえてこの問題を公の場で訴え出た小野氏の行動は評価できる。
共同製作という場でどのように著作権が扱われるべきなのか、
裁判の行方を追っていこう。


もうひとつこれは小野氏に対する批判ではなくて、私個人の考えとして書く。
今回の騒動の本筋にも関わりないことだけれど、
小野氏が陳述書の中で述べていた、
”アイデアを所長に売って、代わりに経験を得るという意識をもたされている”という
アトリエ系建築事務所の問題を挙げられていたことに関して。
この現状は著作権法に基づけば、改善されるべきだとは思う。
でもこの下働きを経ても潰れなかった人こそが、
独立しても溢れるようなアイデアが生まれてくるような気もするし、
守られた立場にいれば、どうしても気持ちが弛緩してしまって、
逆に真価を発揮する機会が失われてしまうのではないかと思う。
私のただの根性論みたいなものになってしまったけれど…。