ヘンリー・ダーガー展(原美術館)


http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html


今回の旅行最終に訪れたのは原美術館ヘンリー・ダーガー展を観る。
この作家については美術館HPの解説を読まれるといいと思う。
展覧会予告にあったはかなげなイラストに惹かれて、ただなんとなく来てみたのだけれど、
ヘンリー・ダーガーがこつこつと築き上げた世界に触れて呆然としてしまう。
生涯孤独な生活を送りながら、15000ページに及ぶ物語を書き、
そしてその物語を具現化するための絵画を描き続けた人生。
施設ではまっとうな教育を受けられず、施設を逃げ出してからは清掃や皿洗いで生計をたてていた日々は、
決して恵まれた環境ではなかった。
それなのになのか、だからこそなのか、
彼の描く少女たちの楽園の美しい色彩がそれとはあまりにかけ離れているのが私の中で結びつかない。
粗末なボール紙にところどころカーボンでトレースした跡が残るような作品だというのに、
そんな難はみえてこなくて、全体の構成力や執拗なまでの書き込み、独特の世界観に心奪われる。
結局、彼は自ら作品を発表することなくこの世を去るのだけれど、
創作を続けながら彼が考えていたことをもっと知りたいと思った。
世間の評価や名誉欲なんてことは彼には関係なかったんだろうか。
彼はどんな想いで『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアンガールズの物語、
子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリニアン戦争の嵐の物語』をつくったのだろう。


ちょうど会場をまわっている時間にギャラリーガイドが始まって、解説では書かれていないお話もきけた。
きっと彼の作品をみると少女への執着や性交渉体験の有無なんて疑問が持ち上がってくるだろうけど、
そんな一元的な問題ではヘンリーの絵の謎は解けないなあという解答をいただいた。
ショップでちらちらと目を通した美術手帖を、また改めて読んでおきたい。
ドキュメンタリー映画が上映される動きもあるみたいだ。(『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』)

美術手帖 2007年 05月号 [雑誌]

美術手帖 2007年 05月号 [雑誌]