藤本由紀夫展「+/−」(国立国際美術館)

syn_chron2007-07-08

http://www.nmao.go.jp/japanese/b2popup/j_pre_fujimoto.html
先日の大谷美術館から続いて、今度は藤本さんの新作を観に行く。
今回の展示の目玉は壁一面に並べられた213台のCDプレイヤーの作品「+/−」。
今までの作品とは決定的にスケールが違うのにとまどってしまった。
私は小さな装置からかすかに聴こえる音を追っている方が好きだなあ…としばらく思っていたのだけれど、
10日程経った今頃になって、また観てみたい気持ちになった。
作品と距離をとって佇んでみたり、スピーカーひとつひとつに耳を傾けてみたり。
この大きさでなければ感じられないことを、もっとゆっくり探してみたい。
まだこれから9月中旬まで展示は続くので、詳しく書くことは控えておくけれど、
観に行かれる方は、CDプレイヤーから流れる曲はなにか、
なぜ213台という数なのかというのも確かめておいて下さい。


この展覧会で一番良かったのは、作品自体ではなくて、上記の写真にある図録だった。
小さな正方形の表紙で、まるで『けんちく世界をめぐる10の冒険』みたいな体裁をしてる。
私はその中の、去年行われた藤本さんの講演会「Here and There」の記録文を何度も読み返してた。
特に丸亀のホテルで偶発的に「HereとThere」に気付く箇所がすごく好きで、
そこから過去になんとなく観ていたゴダールの映画とつながっていったり、
その前にヴィトゲンシュタイン箴言やメモが引用されていたりというのに共感。
とりとめなく自分の中に拾い上げていったものが、
すっとひとつにつながっていく快感がよく伝わってくるので。
そんな感覚は今回の別の作品、《PHILOSOPHICAL TOYS》でも感じられる。
会場にあるミニブックの中の文章と、展示室にかかる小さなアクリル板の言葉とを照らし合わせながらまわる作品。


他のB2フロアのコレクション展も藤本さんの作品にちなんだテーマで集められていて、
デュシャン河原温をしっくりと感じられたのが良かった。ソフィ・カルのは可愛くて可笑しい。
初めて野村仁さんの作品が観られたのも良かった。斉藤智さんの作品って、他のはどんなのなんだろ。メモ。


けんちく世界をめぐる10の冒険 (建築文化シナジー)

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ヒア&ゼア・こことよそ [DVD]

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気のおもむくままに目的もなく、観たいものを観て、読みたいものを読む。
そんな私自身はどうなんだろうと考えてしまうこともあるのだけれど、
藤本由紀夫さんの作品や言及をたどっていくと、それでもいいのかなあと思えてくる。
転職して3年、ある程度観たいものがみれて、
そして興味が次々と湧き出てくるような今の暮らしを気に入っている。
前職のときは日々忙殺されていて、休日に行動する気力がだんだんなくなっていってた。
つい最近教えてもらったのだけど、その頃の私はやや円形脱毛気味だったらしい。
全然気付かなかった。ちょっとショック。
「すっかり治って良かったねー」って言われても、ほんとに知らなかったんだけど。