堀江敏幸『めぐらし屋』

めぐらし屋

めぐらし屋


自宅近くのショッピングモール内に雑貨インテリアのセレクトショップができて、
そのお店の書籍コーナーに平置きされていた本。
装丁がいいなっていうのと、堀江敏幸さんの名前が頭にあったので購入。
多分大型書店だったら目に留まらなかっただろうな。


読み始めはざわざわと私の中で落ち着かない感じがしていたのだけど、
だんだんしっくりしてきたのは、主人公の女性“蕗子さん”のせいかな。
私よりも年上だと思うし、こんなに私は病弱ではないけど、
なんだか遠くない存在に感じられた。
ごく簡単に内容を書いてしまうと、
“蕗子さん”が生前あまり交遊のなかったお父さんのことを知ってゆくおはなしで、
初めからそれほど説明的ではなく、少しずつめくるようにディテールが読む側に伝わってくるのが良かった。


ちなみに作者の堀江敏幸さんの名前を頭に入れたのは下の本からなんだけど、

文学:ポスト・ムラカミの日本文学   カルチャー・スタディーズ

文学:ポスト・ムラカミの日本文学 カルチャー・スタディーズ

村上龍の『愛と幻想のファシズム』や、他の若手作家の暴力描写と共に紹介されていた印象があって、
なかなか手に取れずにいた。
もう1度堀江敏幸さんの項を拾ってみるとそうじゃなかったんだな。
この人の新しさは一人称を排除した文体だった。
他の著作も読んでみたくなる。


『ポストムラカミの…』の装丁は佐藤可士和さん。
Amazonの写真では緑一色の表紙だけれど、ほんとはこれに半分近く隠れる紫色の帯がついてる。
この本を買うきっかけになったのが『アート:“芸術”が終わった後の“アート”』

これにはアイボリー色の帯がついていた。
佐藤可士和さんのデザインはよく分からないものもあるけれど、
この本のシリーズの装丁はいいなあと思う。