堀江 敏幸『おぱらばん』

おぱらばん

おぱらばん


現代の小説(エッセイ?)なのに今回は時間をかけて読了。1週間。
丁寧に読んでいたというよりは、分からない語句によくぶつかってしまったから。
思わず自分の備忘録用にもうひとつはてな日記を作ってしまった。
知らなかった言葉を並べておくページもなかなかいいなあ。小さな自己満足。


タイトルの「おぱらばん」って変な言葉って思ったけど、仏語のauparavantから来ているのだった。
通常使用されるavantの代わりに中国人がよく用いてる言葉。
仏人は半ば冷やかし気味に見ているくだりが最初の章に描かれるのだけど、
そんなパリに住む異国人たちの悲哀の空気感が作品全体に流れてる。
それに「彷徨」って言葉がよく用いられていて、
その言葉のようにとりとめなく関心事が移ってゆく話の運びが良かった。


これっ、て思ったのは、ジャック・リベットの『北の橋』の挿入箇所で、
パリを双六のようにまわるロード・ムービーが、
こんなに軽やかに引用されている文章に感嘆してしまう。
“湿気を吸ってわずかに重量を増した雨の日の本の頁みたいな、
指先で気温や湿度までがはっきりと感じられるほど質感のある画面”
なんて表現されてると、私も懐かしい記憶をたぐり寄せたくなる。
もう今はない上本町6丁目にある映画館で観たのだったっけ。
そうそう、リベットのDVD-BOXを買おうかどうか迷っていたのだけど、
Amazonのボタン押しちゃおうかな。どれもまた観てみたい3作品。
これに『地に堕ちた愛』も入ってたら文句ないのにな。

ジャック・リヴェット傑作選DVD-BOX

ジャック・リヴェット傑作選DVD-BOX

商業ベースにしっかり乗っていない映画DVDは、
ふとすると在庫切れになっていて後悔してしまうことがよくある。
最近ビクトル・エリセの『マルメロの陽光』をと思ったのだけど、やはり在庫切れ。
あのスペインの日光と柑橘系の果実をキャンバスにのせる画家の映像をまた観たい。
他のエリセの作品のDVDも高騰していた。