「鈴木理策:熊野、雪、桜」展(東京都写真美術館)

syn_chron2007-09-02

http://www.syabi.com/details/suzuki.html

今回の東京旅行。
限られた時間の中でまわったのが8会場。
それぞれに私に印象を与えてくれた展覧会だったのだけれど、
その中でもっとも心がざわめいたのがこの写真展。


私はそれほど熱心に、写真展というものに足を運んでいるわけではない。
そして《青森県立美術館》の写真集は予約までしていたのに、まだあまり開けたことがなくて、
でも以前読んだ「建築写真」で、この写真集と設計者の青木淳さんだけでなく、
鈴木理策」さんというお名前にひっかかっていたのだった。


「熊野、雪、桜」展の空間は、2つの展示室とそれをつなげる通路だけで構成されている。
黒と白、光と闇、明と暗…。
対になる2つの空間を結ぶのは火の粉と粉雪の写真のシリーズ。
消え入りそうな火の粉をたどっていくと、暗いところからだんだん粉雪があらわれてくる。
静かな躍動感を感じながら、はかなげな連なりを見つめているだけなのに、
発したいことが言葉にできなくて喉元がきゅっと締め付けられる。
このシーケンスは映像的?
そして映像だったらこぼれおちてしまうような情緒が、
作品ひとつひとつに閉じ込められているのを感じてた。


続いてあらわれる展示室は圧巻。
建築家の講演会や著作ではしばしばホワイトキューブ論がきかれるけれど、
そんなもろもろを一蹴してしまうかのような空間。
なぜ白なのか。なんとなく…じゃなくて、ここでは絶対に白なんだと。
この中でぼわっと浮かんでくる雪や桜の写真たちにも、
自然の姿の意外な一面をみたのだった。
作品の対象といい、陰翳の効果的な使い方といい、
日本って素晴らしいなあと唸らされてしまう展覧会。
ここで感じとるような空気感が、私の日頃の文章にも表現できたらと思うのだけど、
やっぱり言葉足らずだったり、余分なものがくっついていたりする。


青木淳 JUN AOKI COMPLETE WORKS〈2〉青森県立美術館  XKHOME特別編集8建築写真 (エクスナレッジムック―X-Knowledge HOME特別編集)