「鈴木理策:熊野、雪、桜」展(東京都写真美術館)
http://www.syabi.com/details/suzuki.html
今回の東京旅行。
限られた時間の中でまわったのが8会場。
それぞれに私に印象を与えてくれた展覧会だったのだけれど、
その中でもっとも心がざわめいたのがこの写真展。
私はそれほど熱心に、写真展というものに足を運んでいるわけではない。
そして《青森県立美術館》の写真集は予約までしていたのに、まだあまり開けたことがなくて、
でも以前読んだ「建築写真」で、この写真集と設計者の青木淳さんだけでなく、
「鈴木理策」さんというお名前にひっかかっていたのだった。
「熊野、雪、桜」展の空間は、2つの展示室とそれをつなげる通路だけで構成されている。
黒と白、光と闇、明と暗…。
対になる2つの空間を結ぶのは火の粉と粉雪の写真のシリーズ。
消え入りそうな火の粉をたどっていくと、暗いところからだんだん粉雪があらわれてくる。
静かな躍動感を感じながら、はかなげな連なりを見つめているだけなのに、
発したいことが言葉にできなくて喉元がきゅっと締め付けられる。
このシーケンスは映像的?
そして映像だったらこぼれおちてしまうような情緒が、
作品ひとつひとつに閉じ込められているのを感じてた。
続いてあらわれる展示室は圧巻。
建築家の講演会や著作ではしばしばホワイトキューブ論がきかれるけれど、
そんなもろもろを一蹴してしまうかのような空間。
なぜ白なのか。なんとなく…じゃなくて、ここでは絶対に白なんだと。
この中でぼわっと浮かんでくる雪や桜の写真たちにも、
自然の姿の意外な一面をみたのだった。
作品の対象といい、陰翳の効果的な使い方といい、
日本って素晴らしいなあと唸らされてしまう展覧会。
ここで感じとるような空気感が、私の日頃の文章にも表現できたらと思うのだけど、
やっぱり言葉足らずだったり、余分なものがくっついていたりする。