秋吉風人「on a peaceful holiday」(TARO NASU OSAKA)

http://www.taronasugallery.com/exh_osaka/index.html

農林会館ビルの次はTARO NASUへ。
去年「taro nasu bambi」に立ち寄って以来だったけれど、今月からまた新しい展覧会が行われているのを知ったので。
柔らかな照明のオブジェが浮かんでた「taro nasu bambi」とは打って変わり、
黒のフィルムで覆われた入り口に迎えられ少し動揺してしまう。

あと入り口前に佇んでいた方が出品者の秋吉さんで、作品を鑑賞している間にもご本人が隣に立たれたりして、
いつもと違う感じにどう自分を置いたらよいものか、落ち着かない気持ちになる。
そう、この展覧会には下記の試みが行われていた。

今回の展示は、開廊中、常に会場に作家本人がいるという設定で開催される。

これは画廊を展示空間という公的空間ではなく、作家を取り囲む私的な空間に見立てた一種のパフォーマンスである。
そこで展示されるのは作品だけではない。作家もまた「制作をしていない時間」を 表現する展示「物」として存在するのである。

制作のために必要な、しかし一見、無為にして怠惰に思える独特の時間を アーティスト本人と画廊空間のなかで共有しながら、
「制作すること」を めぐるアーティストの試行錯誤と息づかいとを「体感」してほしい。
(展覧会情報のページより引用)

一番奥の壁には秋吉さんがアトリエで撮影した映像。
制作にとりかかろうと、白いキャンバスを前に悶々とされてる様子が流れてる。

思い出すと恥ずかしくなるぐらい拙い質問もたくさんしてしまったけれど、
返ってくる秋吉さんの答えをつなぎ合わせていくうちに、やっとギャラリーの空間に落ち着いていく自分が感じられた。
映写機が置かれている椅子は実際にアトリエで座わられているものが持ち込まれていて、
キャンバスのかかる壁の映像はギャラリーの壁と同化してる。隣には作家ご自身。
だからアトリエの時空間に入り込んだような錯覚も覚えるけれど、でも作家さんは「制作中」の時間から解き放たれてる。
不思議なレイヤーの重なりがみえた。


他にふたつの映像が流れる。
ひとつは入り口すぐの、アトリエのディテールを追った映像。
使い込んだ画材ひとつひとつが映るたびに、学生時代の記憶がよみがえってきて懐かしい。
そしてもうひとつはワインバーのある一室で流れてる。
ここの空間の写真は『新建築』にも映ってなかったし、関係者でないのに中に入ることができて嬉しい。
他の展示のときも入れるのかな?
映像作品の内容はこれから行かれるひとのために内緒にしておくけれど、
テーブルに置かれてるワインボトルとグラスがぼんやりと目に入り、
部屋の片隅の小さなモニターから流れる色・音と共にいるのが、とても居心地がよかった。
でも撮影してる秋吉さんの心境はどうだったのかふと考えてみたり。


会期はあと4回。4/28、5/12、19、26。すべて土曜日。13:00〜19:00。
出品作家の方と共有する展覧会というのが面白かったし、
青木さんが試みた空間の質の、ある変化したひとつのかたちをじっくり楽しむことができたと思う。


新建築 2007年 03月号 [雑誌]

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