「YUKIO FUJIMOTO HERE & THERE」(国立国際美術館)

(藤本由紀夫ビデオ上映会)

この夏たびたび登場する藤本由紀夫さん関連のエントリー。
ほんとは今月11日の講演会にも行っていて、
「引用と複製」のテーマを面白く聴かせてもらったのだった。
いくつかサウンド作品も流されたのだけど、
その日の会場の音声は、作品のスピーカーも提供されているBOSEの方が担当。


本題のビデオ作品のことを。
藤本さんの作品のイメージ映像というところかな。
撮影や編集は藤本さん自身がされていて、製作は西宮大谷記念美術館。2005年。60分。
きっと美術館の遠足関連でつくられたものだと思う。
でも実はこのビデオ、最初から最後まで無音だったのです。
藤本作品は「サウンドアート」なのにこれは意外。
意外すぎて会場にいた方は半数以上席を立たれてしまった。
私はここのところ藤本さんに夢中なので、すっかり映像にひき込まれていたけれど。
石畳を滑ってゆくガラスのビー玉、陶器の中を転がる裸のシリンダー・オルゴール…。
サイレントだからこそ、頭の中の音色に耳をそばだてようとする。


食い入るように見つめてしまったのは2つめに流れた作品《STAR》の映像。
私には文章で説明できそうにないので、ある美術館の作品写真をお借りする。
(ごめんなさい。それと今回の映像のカットではありません。)

この作品が置かれている建物が私の!なのだけど、
これは安藤忠雄さんが手がけられたライカという服飾の本社ビルであったものの内部。
現在はその会社が所有を手放していて、建物自体使用されていない。

円形のエントランスホールに、《STAR》がさまざまな方向を向いてそこかしこに置かれている。
外周に沿うスロープは映像のフレームを越えて続いているよう。
かなりの高さがある吹き抜け。ガラスとコンクリートが形づくる大空間。
今は廃墟のようになりつつある建物が、
こうやってアートと共鳴する空間であった時代もあったんだ。
なんとなく図録で情報は得ていたのだけれど、
こうやってまざまざと映像を突きつけられて、なんともいえない気持ちに。
展覧会があったのは1990年。
まだ関西にはいなかったし、現代美術に興味がなかった当時の私には縁がなかったかな。
でもなんとかその場に立ち会っていたかった。


私の中で《旧ライカ本社ビル》は、以前ずっと思い続けていた《ジェームス邸》になりつつある。
願っていたらいつかその空間を体験できるのかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/syn_chron/20070329#1175188373
私の勝手な希望は、現代美術のための空間に転用されること。
エントランスはもちろん、倉庫だったようなフロアも活用できるに違いない。


あとTOTOの建築マップの解説で、エントランスの箇所を一部引用。

直径30m、7層吹抜けのガラスブロックシリンダーで、このゆとりある空間は一般のオフィスの機能、経済性中心空間へのアンチ・メッセージとなっている。

経済性に対抗していたはずの空間が、その経済に敗れてしまったということ?