田中米吉展(山口県立美術館)

下記の記事でも書いているように、この日は12時から展示室がオープンして、
昼に講演会、夜にライヴと、ずっと山口情報芸術センターに入り浸りの予定だったのです。
でも館内のチラシを目にしていて、「どうしても行かなくちゃ」という気にさせられるものが。
それが田中米吉展でした。
(いつまでリンクできるか分からないけれど、作品紹介のページ↓
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/gyosei/bunka-s/kenbi/tanaka/work.html


もともと鬼頭梓建築設計事務所設計の山口県立美術館の建物が気になっていました。
でも移動時間も合わせて1時間半なんて状況で、あわただしく訪れてなにが得られるのだろう?
しばらく躊躇していたのですが、やっぱり行動に出てしまうのが私らしい。




建物に入ってまず目にするのが、中庭に向かって大きく開かれた窓に広がる緑。
作品を避けるために写真は切れてしまっていますが、
実際はずっと横長に窓が続いています。
どこかの建築ガイドでも書かれていた、
展示室のスロープを中心とした空間にもじんとしてしまいました。


田中さんの立体作品にも、豊かな力を感じていました。
ティールやアルミニウム、プラスチックなどを材として幾何学的な形をしているのに、
観る者をいつまでも待っていてくれるようなあたたかみを宿してる。
山口県内にある野外彫刻が紹介されているパネルをみてはっとしたのがこれ。

秋吉台国際芸術村の入り口にあったオブジェは田中さんの作品でした。


吹き抜けの広い空間には、Untitledシリーズの作品が点在していました。
このシリーズは、コールステンスティールの直方体(1.5tもあるものも!)が筒状の透明アクリルの支柱に支えられている作品で、
まるでスティールの物体は宙に浮いているかのような印象を持ちます。
そして支柱とのジョイント部分の仕掛により、大きな直方体が揺れたり回ったりするのです。
あちらこちらで作品たちが揺れているなかで、白髪でサングラスの男性が観客に語りかけられていました。
作家の田中さんご自身が会場で説明をされていたのです。
田中米吉さんについてなにも知らなかった私も、少しお話させていただきました。
印象的だったのは秋吉台国際芸術村の作品についての田中さんの言葉。
   あれは3tだからなかなか揺れないと思うけど、
   たまに揺れたのを見たって知らせてもらうことがあるよ。
   あれの下をくぐって中から空を見上げるとね…。
どうしてなんだろう。制作した作家さん自身から発せられる言葉って、なんて活き活きと伝わってくるんだろう。
そして私はただ一定距離からでしかその彫刻作品を眺めていなかったことを悔しく思ったのでした。



作家さんの年代の違いもあるのでしょうか?
下記の山口情報芸術センターでみてきたものと、山口県立美術館の田中米吉展と。
双方から感じられることの相違が大きすぎて、
私自身の価値観はどこに置かれるべきなのか考えこんでしまいました。
市川創太さん率いるコーポラ・イン・サイトとそれに関するイベントは、
新しくてかっこ良くて、これからの可能性を感じるものだったと思います。
でも私には田中米吉さんの力強さとあたたかみがより深く記憶に刻まれています。